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李登輝 【講演録】2009.09.05 三、坂本竜馬の「船中八策」に託した江口先生の私への提言

 明治維新を動かした憂国の志士は丁度みなさんのような三十代前後の青年達です。徳川末期の若者達が、その置かれた立場の違いにもかかわらず、申し合わせたように政治改革の必要性を感じ取っていたことは実に印象的です。忘れてはならないことは、竜馬が長崎から京に上る船の中で、改革案を八箇条にまとめたことに表れているように、当時の青年達は、ただ血気にはやってことを進めたのではなく、よく国勢を了解し、国運を己の使命と受けとめて活動していたということです。
 竜馬の「船中八策」は、古今を問わず、日本の若い青年を鼓舞するものであり、若い青年たちの命を賭した実践は、永く歴史の記憶に刻まれています。
 
 日本だけではありません。日本と同じく周囲を海に囲まれた台湾に住む私自身も、「船中八策」に大いに励まされてきたのです。
 平成九年(一九九七年)四月二十九日、私が総統として台湾の民主化と自由化に努力奮闘している時、PHP総合研究所社長の江口克彦先生から竜馬の「船中八策」に託した激励のお手紙と提言をいただきました。  
 
 江口社長は、私にとってきわめて重要な友人のひとりでありますが、とくに、当時の台湾が置かれていた内外の情勢と私の主張を実に適確に理解しており、「船中八策」に託しての私への提言は非常に意義深く、総統である私に大きな勇気を与えてくれるものでありました。
 
 江口社長の提言は又、台湾に住む我々にも坂本竜馬の「船中八策」は、非常に重要な政治改革の方向であったこと。これが私の言う脱古改新、即ち中国的政治文化に対する離脱であったと共に、私たちにとっても、誇りを持って実践に当たる使命感が強化されました。時間の都合上、本日の講演では江口社長の台湾の提言は、残念ながら割愛せざるを得ません。


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»» 四、「船中八策」に託した私の日本への提言
»» 五、結び

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»» 二、坂本竜馬の「船中八策」

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